国で愛用される老舗傘メーカー。ネット販売でさらに飛躍
120年以上の歴史を刻む老舗傘メーカー、オカモト。変わりゆく時代のなかで一貫して「品質と心」を大切にし、丈夫で愛される傘をつくり続けています。「若い方と、会社の新しい時代を築いていきたい」と語る岡本卓麿部長に、仕事の喜びなどについて聞きました。
【岡本卓麿部長】
―傘を扱われていると聞きましたが、社内での具体的な仕事内容について教えていただけますか?
工場から届く商品の検品、梱包、出荷などが中心になります。ここ数年はインターネットの大手ECサイトでの販売に力を入れているので、ネット上でいかに分かりやすく特徴を伝えて、売り上げを伸ばしていくのか、という部分も大切な仕事のひとつとなっていますね。
【1本ずつ開き、丁寧に検品する社員】
―ネット販売の比率はどのくらいなのでしょうか?
以前は卸が100%でしたが、いまはネット販売が全体の25%を占めています。今後5年以内に50%まで伸ばしていく計画です。そのためには写真や動画でいかに魅力をアピールしていくか、サービスや付加価値をつけていくか、どれだけ敏感に時代の変化に対応できるかなどが重要となっていきます。
ネット販売事業は、昨年まで私が一人で担当していました。でも少しずつ若手社員が興味を持ち始めて自分もやりたいと手を挙げてくれるようになり、いまは4人体制で取り組んでいます。積極的にチャレンジする意欲のある人には、面白い仕事だと思いますね。
【花柄の日傘。ECサイトで、母の日などのギフト用として人気という】
―長い歴史がありますが、傘そのものにも時代による変化があるのでしょうか?
もちろん、あります。
例えば、ビニール傘。ひと昔前までは1本数百円で取引先に卸して、それを小売店が売るというのが主流でした。年間で100万本から200万本が消費され、使い捨てられていたんです。でも、ここ数年で大きく変わりましたね。付加価値のある、数千円単位の傘が求められるようになったんです。
その背景には、SDGsに代表されるような、環境や資源への意識の高まりがあります。使い捨てできるような安価な傘を大量消費し続けることに疑問を持つ人が増え、私たちとしても、そのようなものを今後も生産し続けるのはおかしいのではないかと感じるようになりました。
そこで、同じビニール傘でも骨組みがグラスファイバー性の「耐風ビニール傘」をつくってみました。錆びないというだけではなく、軽くて、耐久性にも優れていることから、すぐに人気商品となりました。
また、骨組みを通常の倍の16本使ったジャンプ傘なども多くの方にご愛用いただいています。4000円近くする商品ですが、品質を求めるお客さんが増えていることを実感しますね。
【グラスファイバーの骨組みを16本使ったジャンプ傘】
―そのような変化のなかでも、変わらずに大切にされていることはありますか。
心を込める、ということに尽きます。
ネット販売では、直接お会いできないからこそ、細やかな心配りが欠かせません。ギフト商材を扱うことも多いので、ラッピングしたり、メッセージカードをお付けしたりする必要が生じてきます。そうした一つひとつの手作業に、どれほど心を込めているか。それは直接お客様に伝わり、すべてレビューとして返ってきます。ですので、お喜びの声を聞くと本当に嬉しいですね。直筆のお手紙をいただいたこともあります。そうした感動を共有できる人なら、きっと楽しく働けるはずです。
―最後に、これからの展望をお聞かせください。
現在、当社で扱っている傘はおそらく2,000種類を超えています。ただ、今後は数を絞って、「オカモトといえば、この傘」という特徴を打ち出していきたい。時代の変化にあったブランドを確立しつつ、若い方たちの知恵を借りながら、新しいオカモトの歴史をつくっていけたら嬉しいですね。